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【REPORT|令和6年2月15日開催】地域公共交通勉強会「庄内」地域別部会ワークショップ

山形県の地域公共交通について、共通の課題(課題の明確化・地域公共交通等)を抱えている複数自治体が集まり、他地域の先進事例を学ぶ勉強会として開催してきた『地域公共交通勉強会』。今回は令和6年2月15日に開催された『地域公共交通勉強会「庄内」地域別部会ワークショップをレポートします。

実施レポート

山形県地域公共交通活性化協議会
地域公共交通勉強会「庄内」地域別部会ワークショップ

【開催日時】令和6年2月15日(火)13時30分~
【開催会場】
庄内総合支庁41号会議室

【実施内容】ワークショップ
□コーディネーター|菅野 永さま(株式会社MAKOTO WILL 代表取締役)
□鶴岡市担当者 □三川町担当者 □酒田市担当者(2名) □庄内町担当者

【ワークショップの内容・流れ】
SWOT分析(個人ワーク)
SWOT分析では各自治体の「Strength|強み」「Weakness|弱み」「Opportunity|機会」「Threat|脅威」の現状について分析します。

❷統合セッション❸ワークシート共有(グループワーク
個人ワークの「SWOT分析」結果をグループで共有するために発表をします。今回は1グループだったので、統合セッションとワークシートの共有を同時に行います。

❹共通テーマとネクストアクションの策定(グループワーク)
❷❸で各自治体の現状をグループ内で共有した上で、特に議論したい「共通テーマ」を決定。共通テーマを軸に課題解決のネクストアクションを導き出すために、グループ内でブレインストーミングを実施します。

参加者は庄内エリアの自治体で公共事業を担当している職員。 議論の内容は「地域公共交通を取り巻く環境分析」と「課題解決に向けたアイデア出し」です。コーディネーターである株式会社MAKOTO WILL代表取締役の菅野さまの自己紹介とアイスブレイクを挟み、いよいよ地域の公共交通課題を分析するワークショップがスタートしました。


【実施内容】グループワーク
『SWOT分析の統合セッション』

まずは各自治体の公共交通担当者が、個人ワークで「SWOT分析」を実施。次にその内容をグループ内で共有するために、参加者ごとに内容を発表するワークショップが行われました。

鶴岡市

【強み】まず鉄道と空港があること。あと観光資源として水族館などもある。比較的に交通会社との連携はうまくできています。

【弱み】やはり人口減少が進んでいる。農村部から市街地への移動、自家用車依存がどんどん進んでいるために、公共交通にかかる予算がどんどん増えています。バス運転手の人手不足、バス路線の短縮や廃線を検討しているが、タクシー需要に供給が追いついていないことが課題。公共交通に対する住民意識の低さなども弱みになると思います。

【機会】機会についてはコロナ後のインバウンド客の回復、無形文化遺産や文化財の認定などに伴う鉄道や航空利用者の増加も考えられます。

【脅威】感染症などの不確定な原因による交通鉄道などの減便、観光母集団の減少、地元企業の経営悪化、昨今の物価上昇や燃料費、人件費の高騰なども脅威に挙げられます。

庄内町

【強み】町の規模から考えると飲食店が多くて、お米が美味しいこと。あとは観光資源が多い鶴岡や酒田に近いこと。あとはJR余目駅があることです。

【弱み】高齢化が進んでいて人材不足。役場も財政不足で国からの補助やふるさと納税でなんとかという状態です。

【機会】町としてDXを推進しているので、キャッシュレス決済などは進んでいます。

【脅威】どこも同じですが燃料高騰、物価高騰、あとは陸羽東線はどうなるのか、2024年問題による流通人材不足にどう対応していくのか、などが考えられます。

酒田市

【強み】JR酒田駅があって交通の結節点になっています。公共交通について意識の高い首長がいます。町の構造としては大学があって、有識者の先生方からアドバイスをいただけます。日本海総合病院という中核病院の存在、イオンなど商業施設もある。令和4年に路線改変を行ったことで路線が集約してわかりやすくなったことで利用者が増えています。

【弱み】自治体の財政が厳しいところ。合併した市なので面積が広がりすぎた上に移動に時間がかかる地域。学校などの主要施設が郊外に多いことも、公共交通にとっては弱みになってしまいます。公共交通については一社提携している状態なので、収支状況によってはあっさり廃線が生まれてしまうことです。あとは小型バスで運行しているので乗車人数は限られてしまうところです。

【機会】低床のバスを使っているのでバリアフリーであることです。定額制なので気軽に乗れること。運行の経路については主要拠点の位置付けを考慮したアクセスを考えた経路設計になっていることです。あとはバス以外の地域をデマンドタクシーを配置しているので、公共交通の空白地が少ないです。

【脅威】バス運行について1社に委託しているので、今後観光客が増えて便数を増加したい時に人材不足の状態で対応していただけるのかが課題です。


【実施内容】グループワーク
『共通テーマとネクストアクションの策定』

探索型の課題抽出とバックキャストによるブレインストーミング
グループワークで各自治体の現状分析を共有したあと、コーディネーターである菅野さんのファシリテーションにより「特に議論したい共通テーマ」を選定。最後にその課題を解決していくための「ネクストアクション」を策定するために、参加者全員でブレインストーミングを行いました。

【コメンテーター|菅野さま】
先ほど皆さんにアウトプットしていただいた内容にも、共通の課題が見つかったかと思います。弱みから課題を抽出することは簡単ですが、今皆さんが発表していただいたのはあくまで現状について。理想を仮定してみて、理想と現状のギャップを課題として捉えることもできると思います。あとは自治体単独で考えてもなかなかうまくいかないところを「広域連携」することで解決できないかなど。またニーズやクレームが表面に出やすい「認識型」の課題ではなく、こちらから課題を探しにく「探索型」の課題を見つけられると、根本的な解決に繋がりやすいとされています。

それでは。これまでの皆さんのディベートも踏まえて、必ずしも解決策ではなくあらためて今日議論したいテーマを決めてみてください。ここからは皆さんで共通課題についてブレーンストーミングしていくのですが、その際にぜひ「バックキャスト」で考えてみてください。まずは未来の理想像をイメージして、そこから逆算して今何をすべきかを考えていくという。あと1人でできないことをチームで解決していく、ということも大切です。自分の自治体だけの課題ではないので、例えば広域連携で解決できそうとか。そういうことも考えてみてください。


【実施内容】共通テーマ・ネクストアクションの策定|グループワーク
『公共交通についての住民理解・住民意識の醸成について』

庄内エリアのワークショップで特に議論したい共通テーマは「公共交通に対する住民理解と住民意識の醸成について」。そもそも公共交通の在り方とは、どこまで地域住民のニーズや利便性に応えるべきなのか。人口減少による自治体の財政困難により、今後公共交通の補助金や交付金が減少していく中で、大変重要なテーマではないかという意見の総意がありました。

【自治体A】
栃木県小山市で発行している公共交通をテーマにしたフリーペーパーがありまして。利用者が顔出しでコメントしていたり、運転手が「こんな気持ちで運転しています」等が掲載されてます。そこに利用者の推移や公共交通事業の収支率も公開しているんです。こういう方法でも住民意識は変えられるかもしれません。

【自治体B】
そこまでではないですけど、実はうちの自治体でもデマンド交通について情報を広報で公開したり、とある地区限定ですが広報に折り込み通信を挟んで、そこにデマンド交通を利用したモデルルートを示したり。路線図やダイヤの情報だけではなく「どう使うのか」を具体的に示すと効果が見られました。

【菅野さま】
利用者である地域住民に、公共交通をどうしたいのかを考えてもらうことってできないんでしょうか?

【自治体C】
「もし公共交通がなくなったら」くらい、住民に危機感をイメージしてもらうことも必要かもしれません。その上で本当に必要なサービスのカタチを、住民と一緒にゼロベースから考えていく。自治体間での意見交換の場は貴重ですが、交通事業者がこの場にいないと具体的な課題については詰めていけないですよね。町として公共交通のプライオリティーに差があるので、決して同じ政策では成り立たないこともありますし。

【自治体A】
住民の多くは「役所の話を聞かない」というか「うまくメッセージを伝えられていない」ということに気付かされたことがありまして。しっかり意見交換できる場を作ることが重要なのかもしれません。あと担当者である自分自身が本当に町民目線になっているのか、まずは自分自身がバスに乗ってそれを確かめてみたいと思いました。



コーディネーターの菅野さんがワークショップのまとめと、今後のアクションに言及したところで勉強会は終了。最後に運営側の山形県庄内エリアの担当者に、ワークショップの感想を一言いただきました。

COMMENTATOR
「庄内」地域部会ワークショップ|県担当者さまのコメント
各自治体の担当者さんは、住民意識を吸い上げて当然責任を持ってやってらっしゃいます。議論を進める中で「いわゆる行政目線からどんどん町民目線に変わっていった」ことが印象的でした。こうやって各自治体の担当者が顔を合わせて意見交換をする場自体が貴重ですので、いい収穫があったと感じています。